2011/04/29

Rattigan原作の映画、"Separate Tables" (1958)

冬の保養地の孤独
Rattigan原作の映画、"Separate Tables" (1958)


アメリカ映画、白黒

鑑賞した日:2011.4.28
映画館:NFT2, British Film Institute (BFI)

監督:Delbert Mann
脚本:Terence Rattigan, John Gay
原作:Terence Rattigan
制作:Harold Hecht
音楽:David Raksin
撮影:Charles Lang Jr.

出演:
Burt Lancaster (John Malcolm)
Rita Hayworth (Ann Shankland, John's ex-wife)
Wendy Hiller (Pat Cooper, hotel manager & John's fiancée)
Deborah Kerr (Sibyl Railton-Bell)
Gladys Cooper (Mrs Railton-Bell, Sibyl's mother)
David Niven (Angus Pollock, retired military officer)
Rod Taylor (Charles, hotel customer)
Audrey Dalton (Jean, Charles's girlfriend)
Cathleen Nesbitt (Lady Matheson)

☆☆☆ / 5

British Film InstituteのTerence Rattigan特集のうちの1本。有名スターを散りばめたハリウッド映画であり、無理にドラマチックにしようとしているのか、演技や音楽がこってりした味付けで、しつこい感じがしたが、それでもベースにあるRattiganの原作と脚本が素晴らしいため、結果的には大変楽しい時間を過ごせた。

この劇は、日本で2005年に自転車キンクリートが全労済ホールで上演し、私も見ているが、それも大変楽しめたという印象が残っている。他の方のブログを見てみると、久世星佳、山田まりや、坂手洋二、他、出演。脚本(翻訳?)、演出はマキノノゾミ。

この映画版では、話の内容は同じだが、原作では2つの幕で前後半に別れてオムニバス形式だったストーリーをひとつに組み合わせて同時進行していて、全体として1つのストーリーになっている。舞台でも、このシナリオを使って上演してみるのも面白いのではないか。オリジナルの舞台用脚本と遜色ないかもしれない。脚本もラティガン自身が関わって他の人と一緒に書いている。50年代のハリウッド映画なので、あまりにも作りものらしい感じが玉に傷。音楽がやたらお節介に鳴り響き、騒々しい。

状況設定は、イギリス南西部Dorcet州の海辺の保養地Bournemouthの安ホテル。季節は冬で、長期滞在者しか残っていない。その一人が飲んだくれのJohn Malcolm (Burt Lancaster)、ホテルの支配人Pat Cooperと婚約している。しかし、そこにRita Hayworth演じるJohnの元の妻、Ann Shanklandが彼を追ってやって来る。Johnは二人の間にはもう何の気持ちも残っていないと言うが、会話を重ねる内に彼女が彼を必要としていることが分かり、情熱に火が付く。一方、いつも軽口をたたきつつダンディーぶりを発揮しているMajor Angus Pollockという退役軍人に、母親に一から十まで指図され、仕事も持たず、男性とつきあえないままオールドミスになってしまったSibyl Railton-Bellは憧れている。しかし、モラルに厳しく口うるさい母親のMrs Railton-Bellは、Angus Pollockが映画館で女性を触ったという罪で裁判にかけられたという地方紙の記事を見つける。またPollockは、第一次大戦で戦功をたて、階級もMajor(少佐)だったと言っていたが、それらは全て嘘であり、人間関係に不器用な小心者に過ぎなかった。Mrs Railton-Bellは、彼をホテルから追放しようと他の住民と画策し、支配人のCooperに申し入れる。Pollockはいたたまれなくなり、自らホテルを出ると申し出るが、娘のSibylは始めて母親に反抗して、彼を引き留める。

Rattiganらしい、心優しい孤独な人々が散りばめられた脚本。また押し込められてきた情念が一気に発露される時があるのも彼の特徴と思う。とりわけ、Ann Shankland、Sibyl Railton-Bellと言った女性達が男性を積極的に求めるところや、ロマンチックなだけでなく、Annやホテルの客のひとりのJeanがボーイフレンドを私室に誘うところなど、女性にとってもセックスは大事であると示すところもRattiganらしいかもしれない。一方、JohnやMajor Pollockは現実を逃避して酒に溺れたり、嘘やごまかしで逃げたりして生きているし、JeanのボーイフレンドのCharlesも、積極的な恋人に押されっぱなしのだらしない男。題名は、ホテルの食堂で住人達がそれぞれ別のテーブルに座って食事することから。つまり孤独を表すのだが、やがてその離ればなれのテーブルの間に気持ちの繋がりが生まれる。昔の映画だから仕方ないが、Burt Lancaster, Rita Hayworthというふたりの大スターの、演劇よりも芝居くさい演技が鼻につき、私にとってはこの二人にいまひとつ共感しづらいのが難点だった。格好良すぎて、気持ちのすさんだ生活を送っている人達に見えない。ただ、他の役者は良かった。特にSibylを演じたDeborah Kerrが印象に残る。劇場は私と同世代かそれ以上の年配の観客、特にカップル、で一杯、上映終了時には拍手が起こった。

(余談)イギリスの劇場や映画館、展覧会等に行くと、年配のご夫婦で連れ立って見に来ている方々の多いこと!こういう人々が文化を支えているのだとつくづく思う。一方日本では女性のグルーブが大変多いし、男性はやや少なく、またひとりで来る男性が多いという印象だ。英米は夫婦で趣味を共有するというのが当たり前の文化なのに対し、日本では女性は友人や地域の知り合いと、そして男性は仕事仲間との結びつきが主なのかな? イギリスではレストランでも夫婦やカップルが主だし、食事に招いたり招かれたりする時も夫婦単位。良いことだと思う。ただし、ひとり者は寂しい。でもだから一人の人でも、パートナーを捜すインセンティブになるし、男女のゲイのカップルも多く、夫婦を招くように自然にゲイのカップルを招いたり招かれたりする人も多いだろう。

日本では、『旅路』というタイトルでDVDが発売されている。米国のAmazon.comでは、これ以外に、Julie Christy, Alan Bates, Claire Bloomなどが主演した同名の作品も見つかった(VHS, 1993)。そちらは2つの幕に分けた構造を踏襲しているようだ。

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